思考力を伸ばそう!「2024神奈川県高校入試を終えて」

神奈川県公立高校入試が、本日行われた追検査を以ってすべて終了しました。

あとは合格発表を待つのみとなります。目標校への入学を目指して学習に取り組んだ全ての受験生には、心から「お疲れ様、よくがんばった」と伝えたいと思います。

開校間もない当塾でも、数人ではありますが受験へと取り組んだ生徒がおり、彼らの頑張りは生徒自身のみならず周囲の小中学生をも動かすエネルギーになっていました。(合格実績、結果に関しましては本年は人数が非常に少ないため、個人情報保護の観点から発表はしない予定です。)

さて、本年度は2020年度における学習指導要領改訂(中学校は2021年度)から3年間を学んできた生徒が受ける初めての入試ということもあり、新しくなった教科書に合わせた出題傾向や出題形式の変化がみられるのではと予想された年でした。

今回は、科目別にどのような点に変化があり、そしてどのような学力が求められ、そのためにどのような学習をすべきなのかについて当塾が感じた点を書いていきます。これから中学生となる小6生、受験が近づいてきた中1、中2生の皆様は是非参考にしていただければと思います。

英語

難易度が一番大きく上昇したと思われるのが英語です。学習指導要領改訂でも単語数の増加や高校からの文法事項移入といった形で変化の大きかった科目でしたが、今回の入試では全受験生共通で最も難しく感じたのではないでしょうか。

変化点としては「求められる語彙力の増加」につきます。昨年までであれば注釈のついていたレベルの単語がそのまま文中に出題されており、またその部分の内容を問う形での問題が多くありました。英文を実際に書く問題は例年通り1問のみで変化はありませんでしたが、単語の意味を確実に且つ豊富に覚えているのかといった点で差がついた入試問題であったと思います。とはいえ、文法問題も例年通り一筋縄ではいかない問題が多く、語彙力だけでは太刀打ちできません。

受験に向けた学習としては語彙力の増強と、基礎文法知識の徹底につきます。単語学習については学校や塾での学習というよりも、日々の学習計画に必ず単語を覚える時間を組み込むことが必須です。文法知識は現在の教科書と学校ワークだけでは文法の体系的な学習に向いていない上に練習量が不足してしまうため、参考書や問題集を利用することが求められると考えます。

国語

国語も難易度が上昇しました。昨年の問題が易しく平均点も高かったため、今年最も大きく平均点を落とした科目になるのではと感じます。出題内容は、最後の問題が「図やグラフ等の資料から情報を読み取る問題」にかわり「複数のテキストから情報を要約して考える問題」に変化しました。この変更も難しくなったと感じる生徒が増えた原因となっていると考えられます。他にも論説文の難易度が高く「なんとなく」で読んできた生徒にとっては特に難しく感じたのではないでしょうか。

求められているのは、「文章、段落の要約力」「具体と抽象、対比や因果関係といった文と文、段落と段落のつながりを理解する力」であり、なぜその答えになるのか、なぜその選択肢が正解になるのかを論理的に考えることができる力です。変わらず問われ続けている部分ではありますが、「要約」が前面に出てきていることからより論理的な読み方が重要になっているといえます。

普段の学習から学校の教科書分以外の問題を解き、答え合わせの際になぜそのような解答になるのか、本文のどこに書かれていたのかを細かく見直すことが必要になります。同時に、文章の論理的な読み方を学習することも必要です。以前のブログ「国語力と国語学習について」でも書きましたが、文章がどのような構成で書かれているのかを学ぶことが大切です。

数学

平年と大きく変わった印象のない入試でした。全範囲からまんべんなく出題され、解ける問題と後回し(捨てる)問題を判断することが、これも例年通りポイントになったと感じます。

求められているのは確実な計算力と、解いたことのある問題パターンを増やすための練習量です。偏差値60までの高校を目標にするのであれば、50点は確実に、70点を目標にして「できる問題を絶対に落とさない」学習が大切になります。

一方、おおまかに偏差値65以上の特色検査実施校を目指す生徒にとっては、プラスして難問に対する多様な解法パターンの理解が必要とされます。「この問題はこう解けばよい」といった学習ではなく、なぜこの解き方にたどり着いたのか、他の方法はないのか、こうすればもっと良くなるのでは、といった思考力の養成が求められています。

理科

出題形式では完答を要求する問題がなくなり、部分部分で得点を得ることができるようになりました。問われている内容は基本的な考え方や知識で解答できるものが多いのですが、問題文やグラフ、実験内容から「何を問われているのか」を読み取ることが難しくなったと感じています。問題内容の読み取りができる生徒であれば易しく、理科が苦手で問題内容が何を言っているのかわからないといった生徒には非常に難しく感じた試験なのではないかと考えます。

単なる暗記だけで対応できる問題は少なく、「なぜそうなるのか」「何のためにこの実験をしているのか」といった考え方を要求している入試でした。

分野にもよりますが、基礎知識は暗記だけでなく「なぜそうなるのか」といった視点で学習することが求められます。学校で行っている実験や観察のレポートやグループ学習での分析や考察が入試に直結した学習になると感じます。当塾でも、提出レポートの確認や実験ベースの問題演習を増やしていくことが必要になると考えております。

社会

例年と大きく変化のない出題形式でした。難易度は答えにくい選択肢がやや増えた印象であり、少し上昇したのではと感じます。グラフや資料の読み取りは例年通り多く出題されていましたが、どちらかというと正確な知識量を問う問題が多くなっていました。

正確で豊富な知識と、グラフ、表、地図から情報を読み取る能力が変わらず要求されています。

毎年出されている歴史分野の並び替え問題にみられるように、語句を単独で覚えるではなく、つながりや関連性を意識した学習が必要になります。地理分野でも例えば「A国の気候帯は熱帯」といった語句一つをとっても、なぜ熱帯になるのか、熱帯であるからどのような産業があるのか、どのような住居、宗教は、歴史は国際関係は・・・といった具合に関連させて覚えていくことが大切です。又、SDGsや海外居住者の参政権等総合問題では現代社会をテーマに作問されることが例年多くあります。特色検査の出題内容にも見られるように、多様な現代社会の知識を持っていることは有利となるため、新聞やニュース等で時事問題を知ることも必要であると考えます。

まとめ

国語の難化により、全体的な科目ごとの平均点は昨年よりも均一化されると思われます。3年前の社会や昨年の国語のように飛びぬけて平均点の高い科目がない理想的な形になってきています。問題の難易度も英語を除けば適切ではないでしょうか。英語は学校英語、そして指導要領の目指す理想と現実との乖離が大きく学校外での対策が必要なことは間違いありません。

10年前の入試問題と比べると、どの科目も「思考力」に重点を置いています。単純に覚えて、問題を解いて正解を重ねるだけの学習ではなく、その上で「なぜそうなるのか」「別の考え方はないのか」「他の事項とどう関連するのか」といった力が必要になっています。

当塾では、生徒一人一人に合わせた指導の中で、各生徒が考えやすい形での「なぜそうなるのか」といった上記の発問と対話を繰り返しています。2024年入試を踏まえて、指導方針が入試問題傾向に合致しているとの自負を新たにするとともに、より考えさせる授業の達成を目指します。